東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)14号 判決
(争いのない事実)
一 本件特許出願に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決理由の要点が、いずれも原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いのないところである。
(取消事由の有無)
二 原告は、本件審決を取り消すべき事由として、審決がした甲第三号証(岐阜県金属試験場長矢橋彦四郎の証明書)記載のドラム鋳造法が本願出願以前に一般に実施されていたとの事実認定は誤りであると主張する。
しかしながら、岐阜県金属試験場長矢橋彦四郎作成の証明書であること当事者間に争いのない右甲第三号証に、成立に争いのない丙第七号証の一から三、証人矢橋彦四郎の証言によりその成立を認めうべき丙第三号証の一から四、同第四号証の一から三及び同第五、第六号証の各一から四並びに証人矢橋彦四郎の証言を参酌すると、右甲第三号証の記載内容は、事実に符合するものであること(甲第三号証中に「昭和三十五年六月以前」とあるのは、丙第七号証の一、二、三(昭和三十五年五月十五日発行の紡織界)の記載に徴しても、本件特許出願前を意味するものであることは明らかである。)を認めうべく、他に右認定をくつがえし、その内容が事実に相違するものであることを認めるに足る適確な証拠はない。もつとも、原告本人尋問の結果に徴すれば、原告から右証明書の基礎とした資料の提示を求められた前記金属試験場の棚瀬、小坂の両技師あるいは岐阜県商工振興課の係員らが、右証明書を書いた覚えがないとか、その取消、訂正を希望するとかいつた事実を認めることができるが、証人矢橋彦四郎及び原告本人の各供述を総合すると、前記係員らは、原告の詰問と右甲第三号証の証明書が特許紛争の渦中に巻き込まれたことに当惑した結果、前記のような言辞を弄したものであることを推認することができるから、これらの言辞だけから、直ちに右甲第三号証の記載内容が虚偽であると断ずることはできない。
(むすび)
三 以上説示のとおり、本件審決に原告主張のような事実誤認があるとすることはできないから、このような事実の誤認のあることを前提として本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものといわざるをえない。